Thursday, July 24, 2014

COMMUNICATION BUILDUP

成田決意とか成田決心などと言う言葉がその昔ありました。(今でも言うのかな?)確か「海外旅行から帰国して自分の語学力のなさを思い知らされ空港にてリベンジを誓うこと。(リベンジは大げさ?)」みたいな意味だったと理解しておりますが、確かに英語が苦手だと言われる日本人にはありがちな状況です。私達も仕事柄毎日海外の方と接しており一般的な日本人よりは日頃から英語を使っておりますが、それでも海外旅行に行く時にはそこそこ緊張したり自身の語学能力の欠如を憂えたりもします。(もちろんそれより圧倒的に楽しみが上回ってますが。)

昨日フランスから若干年配のおじさんがチェックインされました。玄関に現れた彼を見て私はすぐに彼が2度目の来館、つまりリピーターさんだと気づきました。何とうれしいことでしょう。国内の方ならまだしも、海外からこの東の果て(日本)の更に西の果て(長崎)の一介の宿にまたやって来てくれるのです。しかし私は同時に一抹の不安を覚えました。「確かこのおじさんが発する言葉は全編フランス語だぞ。他言語の理解度は日本語はおろか、英語も皆無だぞ。」


私の記憶と予想は的中。彼は相変わらず何の遠慮も躊躇もなく全編フランス語で話しかけてきます。通常このような状況下だと心の狭い私は「君、ここは君にとっては外国なのだよ。日本語とは言わないまでも少しは英語を勉強して来なさい。」とみかん箱に乗るくらいの微妙な高さの上から目線で諭すように説教してしまうのですが(もっとも英語が通じないと説教にならないが)、このおじさんに限ってはその私の威厳と常識は軽く覆され「おぉ、何てこった。前回彼と別れてからこの1年以上の間、私はなぜフランス語を勉強してこなかったんだぁ!!」とこちらが後悔してしまうのです。

プロです。彼は完全な旅行のプロフェッショナルです。つまり彼には鼻からシャルルドゴール決意など存在せず、自分の言葉を理解できない相手が悪いという自己中心、いや寧ろ良い意味での他力本願な、実に親鸞的発想で世を渡り、相手に他者への理解を促すのです。フランス人恐るべし。さすが世界一の観光立国。(注:もちろん大多数のフランスのお客さんは英語を話されます。)

しかし、そんな彼でも少しは改心?したらしく、彼は彼なりにこの1年英語を勉強したとかなり自慢げに話してましたが、まぁその成果は私が見る限り子供が指を三本立てて「ちゃんちゃい」と言えるようになったレベルでしょうか。そんなお茶目なフランスおじさん。恐らく彼は「成田決心」などと言って無条件に英語を学ぶ自虐性に長ける日本人の精神構造を戒め、真のコミュニケーションとは何かを教えにわざわざ馳せ参じてくれているのでしょう。メルシー。

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